5.保育者と親との共同保育

「もりのわ」は
保育者と親との共同による園舎を持たない野外保育のコミュニティです。

共同保育って何でしょう？

お子さんを園に預けるというスタイルではなく、
保育者と親とで一緒に育てる、という子育てのかたちです。

野外保育の場に、子どもと保育者、そしてお当番の親がいます。
お子さんの年齢によりますが、できるだけ大きなお子さんの親御さんを中心に、
お手伝いをお願いしたいと思っています。

一緒に、お散歩の時間を過ごすことで、
保育の現場の姿を感じていただきたいと思います。

とかく、野外保育は、外で活動するわけですから、危ないこともあります。
転んでひざを擦りむくこともあるでしょう。

私たち「もりのわ」の保育は、もちろん安全には気を配りますが、
そういうことも時にはあることへのご理解を得なければいけません。

子どもたちは、自分で行動し、体を動かすなかで、
心にとめていくことがあります。

そのひとつに、自分のなかでの危険予知があります。
小さな子どもでも、それを感じるとる力があります。
子どもは本来、危ないかもしれないということには、ドキドキするものです。
その危険と冒険のラインを、ぎりぎりのところで決めるのは、
子ども自身でなければなりません。

「危ないから」と大人がそれを、子どもが判断する前に制止をすると、
それを体得することができないばかりか、
かえって危ない行動をします。
「わかった」子は、決して危ないことはしません。

保育者は、内心「大丈夫かな」と思いながら、子どもたちを見守っています。
そんな保育の姿を、親御さんにご理解いただくには、
一緒にお当番として入ってもらい、みてもらうことが一番良いと考えます。


また、「もりのわ」では
2才を迎えた子どもたちにとって、
親とはなれて過ごす時間も大切であると考えます。

子どもどうしの時間。
子ども自身で視る自然のなかの時間。
親とはなれて過ごす時間で、子どもたちがみせる表情があります。
ざんねんながら、それは親御さんにみせる姿とは違います。
子どもたちにとって、
「もりのわ」は初めて体験する家族以外の人たちとの社会ともいえます。

人にはいろんな面があるように、
親御さんにはみえない、その子どもの姿があります。
親御さんにしかみえない、子どもの姿があるように。

親がお当番に入った時のその子どもの様子は、
普段の保育の様子を垣間みることはできますが、やっぱり違うと思います。
（それはわるいことではありません。）
なので、親が、自分のお子さんの親とはなれて過ごしている姿をみることは、
当たり前ですが、できないのです。

ですが、お当番になることで、
自分の子どもではない子どもたちと一緒に過ごしてもらうなかで
そんな一面を感じ取っていただけると思います。
きっと、たくさんのことを感じ取っていただけると思います。

子どもたち、大人たち（保育者、親）が一緒に
その時間を共有することで、
日々の様々な思いを抱えて子育てをしているお母さん、お父さんに、
「もりのわ」の保育が、なにかのヒントや、きっかけになれればうれしいです。

さいごに、
私たち保育者は、「先生」ではありません。
お当番の親も、もちろん「先生」ではありません。
しいていうならば、子どもたちにとって、大きな人、というだけです。

以前にも書きましたが、
保育者は、何も特別なことをするわけではありません。
ただ、子どもにとって、何が大切なのかを一番に思い、日々みんなで考えながら、
歩みたいと思います。

もちろん、それは
何もしない、というわけではありません。
お当番の親御さんも、傍観者ではありません。
いろいろなことを頼むこともあります。
どうぞ、保育者と一緒に歩んでください。

いろいろな大人がまわりにいる、ということは、
子どもにとってとても豊かなことではないかと思います。

私たち保育者は、安全や、子どもどうしの心の動きを気にとめつつ、
何が大切なのかを一番に思うなか、ぎりぎりのラインを常に探っています。
その先に、子どもひとりひとりがいろいろに気づき、成長していくのを、
感じることが何よりうれしいことです。


保育者と親の共同保育は、
子どもにとっての、心豊かなコミュニティをつくるのための手だてです。
どうぞ、ご一緒に。
いろんな思いを共有してゆきましょう。


（ゆきんこ記）