いのちと出逢う

「いきものってなに？」と3才を迎えた子が私に言いました。
言われたのはもう数ヶ月前ですが、その言葉が、ずっと心にのこっています。

ああ、この子にとって、言葉で知ることと目の前で自分が体験していることは、
まだつながっていないのだ。

言葉は大切だけど、大切じゃない。
なにより、「感じること」なのだ、と再確認するような出来事でした。

この子たちが、「いきもの」という概念をいつの日か理解するのに、
今という時間がとても大切なのだと思います。

sence of wonder（センス・オブ・ワンダー）「不思議さに目を見張る感性」を、
日々の森でのお散歩のなかに。


森のなか、自然のなかでは、人が予期しない「しぜんの」出会いがあります。
その多くは、「いのちとの出会い」です。


ダビドサナエが、羽化するところ。
セミが死に、アリが集まっているところ。
サワガニ母さんが、たくさんの子ガニをおなかに抱えているところ。
ヤマカガシが、ツチガエルをくわえているところ。
小さなホタルの幼虫が、小さなカワニナを食べているところ
ハンミョウが、ガガンボの幼虫をつかまえたところ
オオアメンボが、コガタコガネグモを食べようとしているところ...

数多の「いのちの出会い」を重ね、子どもたちは
「いきもの」をどう理解するのでしょう。


そんな様々な出会いが、きっと、
自然と人を分かつことのない感性を育んでくれる。
そして、生きものが、生きていのちを紡いでいる今の「しあわせ」を、
お散歩の「たのしさ」にかえながら、子どもたちは日々を重ねてゆきます。


ヒトもまた、地球というその大きな自然のなかにいる同じ生きものだということを、
今、どれだけの大人が体感として持ちえ、認識していることでしょう。

私は、今の時代にある様々な社会の歪みの根底には、
他（者）を思う傷みへの「想像力の欠落」から生まれている気がしています。

つながっていることを体験として知っていることがどれほど大切かと、
しみじみ感じます。

雑多であり、調和した自然のなか、人と人とのなかで過ごす日々は、
人の在り方（根っこ）を幾度も思い起すような体験になると思います。
その時々の様々な所作を、子どもたちの心のなかに培っていってほしいと思います。


余談ですが、
こんなひとつひとつのかけがえのない、その時の体験を重ねている子どもたちが、
ふと、うらやましくなったりもします。

私がン十年と生きてきて、初めての生きものとの出会いも、
3才、4才の頃の経験として、大きくなってゆくのですから。

大人である私は、知識のもとに、その出会いを高めることもできる立場です。
私のアタマのなかを通して、子どもたちに伝えられることも多いでしょう。

でも、それは何より、言葉より先の、
目でみるもの、五感を通しての体験を持ってこそに他ならないのです。

子どもたち自身の「不思議さに目を見張る感性」が育まれ、
そのあとに一緒に思いを巡らせる言葉を持つ、大人でありたいと思います。


（ゆきんこ記）